こんにちは。TATです。
今日のテーマは「アベノミクスによる訪日外国人の増加は本物か?」です。
2012年にアベノミクスが掲げられてから訪日外国人が一気に増えました。
テレビでも訪日外国人が日本で爆買いしたり、東京や京都などの主要観光地を訪れる様子が取り上げられ、年々増加してきたことは周知の通りです。
日本文化の素晴らしさをアピールするような番組や、日本を訪れた外国人をピックアップするような番組もかなり増えました。
テレビのニュースなどを見ると、どうやら日本文化の素晴らしさに海外の方が気づいてくれて訪日客が増加したみたいな言われ方をしている場合もありました。
ここに対して、「本当にそうなんか?」というところをデータをもとに紐解いていきたいと思います。
結論から言うと、訪日外国人が増えたのは日本文化の素晴らしさに気づいたとかそんなきれいな話ではなくて、単純に日本が安いからという悲しい事実が見えてきました。(涙)
ニュースに騙されてはいけません。
目次
【データをもとに検証】アベノミクスによる訪日外国人の増加は本物か?
アベノミクスとは?
まずはアベノミクスについておさらいしておきます。
アベノミクスとは第二次安倍政権で掲げられた経済政策で、中でも「3本の矢」と呼ばれた3つの柱から成りました。
以下、Wikipediaからの抜粋です。
- 第一の矢:大胆な金融政策(デフレ対策としての量的金融緩和政策、リフレーション)
- 2%のインフレ目標
- 無制限の量的緩和
- 円高の是正と、そのための円流動化
- 日本銀行法改正
- 第二の矢:機動的な財政政策(公共事業投資、ケインズ政策)
- 大規模な公共投資(国土強靱化)
- 日本銀行の買いオペレーションを通じた建設国債の買い入れ・長期保有、ただし国債そのものは流動化
- 第三の矢:民間投資を喚起する成長戦略(イノベーション政策、供給サイドの経済学)
- 「健康長寿社会」から創造される成長産業
- 全員参加の成長戦略
- 世界に勝てる若者
- 女性が輝く日本
- NISA
(Wikipedia「アベノミクス」より)
金融政策 、財政政策、成長戦略の3つから成り立っています。
第二次安倍政権が発足してから8年ほど経過しましたが、どれが達成されましたかね。
デフレからは脱却できませんし、ジェンダーギャップ指数もなかなか改善されずにいます。。。
そして訪日外国人が急激に増加し始めたのもこのアベノミクスが始まってからです。
この要因について見ていきます。
データを見ると、決して「世界の人が日本文化の素晴らしさに気づいたからだ〜」みたいなおとぎ話は幻と化しますw
訪日外国人が増加した要因
それでは訪日外国人が増加した要因について見ていきます。
ここでは要因を4つ挙げました。
データを見て確認していきます。
要因①:円安が進んで相対的に日本円が安くなった
1つ目の要因は円安です。
アベノミクスの金融政策に円高の是正がありましたね。
アベノミクスが掲げられる前の為替レートを見ると1ドル80円なんて時期もありました。
リーマンショックで円高が進み、そのまま80円付近をうろうろしていましたが、アベノミクスが掲げられてから円安が一気に進み、2015年には1ドル120円までいきました。
1ドルあたり80円から120円と実に1.5倍です。
2000年以降のUSD/JPYをまとめてみました。
2000年代前半は平均115円くらいですが、リーマンショックが起きてからは80円あたりまで円高が進みました。
その後、アベノミクスによって円安が一気に加速して一時は120円まで円安が進みました。
円安が進むと、外国人が日本を訪れやすくなります。
反対に我々日本人が海外旅行へ行きにくくなります。
1ドル80円だったのが120円になったら、アメリカ旅行へ行くとシンプルに円コストが1.5倍になります。
この円安によって日本円の価値が下がり、海外から日本へ訪れやすくなりました。
ポイント
アベノミクスの金融政策によりそれまでの円高が是正され一気に円安が進んだ。
要因②:日本の長期デフレと経済低迷
2つ目の要因が日本のデフレと経済低迷です。
失われた30年なんて言われ方もしますね。
日本のGDPの推移を見てみると、バブル崩壊後から低迷が続いています。
1980年からの日本のGDP推移をグラフにしてみました。
(世界銀行のデータをもとに作成)
ご覧の通り、バブル崩壊後の日本経済は横ばいです。
ちなみにこちらのデータは世界銀行から取得しました。単位はドルです。
さらに日本はデフレが続いていて、長らく物価が上がらない状況が続いています。
こちらも世界銀行のデータを拝借してグラフを作りました。
(世界銀行のデータをもとに作成)
2000年以降はデフレが長く続いています。
物価が上がらずに、むしろデフレで下がっていくということが起きたわけです。
こうなると、日本の物価はじりじりと下がっていき、相対的に安くなっていきます。
ちなみに世界銀行のデータは誰でも簡単に取得できます。
色々なデータがあり、探索すると面白いデータも見つかったりするのでオススメです。
【Pythonでデータ分析】Pythonで世界銀行のデータを取得して可視化する!
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ポイント
長期にデフレと経済低迷で日本の物価はここ数十年間上がっていない。
要因③:諸外国の経済成長と所得増加
3つ目の要因は諸外国の経済成長と所得の増加です。
日本が低迷している間に、海外はしっかりと成長していました。
GDPも上がっているし、所得も上がっています。
OECDがまとめている平均賃金のデータがあるのでグラフにしてみました。
全ての国を乗せるとごちゃごちゃになったのでG7の国に絞りました。
(OECDのデータより作成)
ここでは2000年の平均賃金を1として、そこからの相対値で表示しています。
日本とイタリアが大敗していることがわかります。
さらにOECD加盟国で2000年と2020年の賃金の比を調べてみると、日本はOECD加盟国35カ国中ワースト4位でした。。。
ワースト5位を見てみると上からイタリア、スペイン、ギリシャ、日本、ポルトガルという順位でした。
日本の場合はぴったり1なので、2000年から2020年にかけて賃金が一切上昇していないことを意味します。(涙)
このような状況に陥ってる際に、海外の国はGDPが成長して賃金も上昇しています。
結果として、物価の変わらない日本が相対的に安くなったと言えます。
ポイント
諸外国は着実に経済成長をし、なおかつ賃金も上昇している。
(おまけ)要因④:ビザの緩和やLCCの普及
4つ目の要因としてビザの緩和とLCCの普及についてもご紹介しておきます。
海外の方々が日本に来るためにはビザが必要になる場合があります。
このビザの基準はもともと厳しくて、日本に来たくてもビザが取れずに来れないというパターンも結構ありました。
しかし、このビザの緩和が進んだために、これまでビザが障壁となってこれなかった外国人も日本にこれるようになりました。
さらにLCCの普及も要因の1つです。
これにより航空運賃が大きく下がったため、訪日のコストが大きく下がりました。
上記の2つの要因も訪日外国人の増加につながったと考えられます。
ポイント
ビザの緩和とLCCの普及により、訪日へのハードルが下がった。
結論:訪日外国人の増加は日本が相対的に安くなったため
ここまでご紹介した要因をまとめると次の通りになります。
ポイント
- アベノミクスの金融政策によりそれまでの円高が是正され一気に円安が進んだ。
- 長期にデフレと経済低迷で日本の物価はここ数十年間上がっていない。
- 諸外国は着実に経済成長をし、なおかつ賃金も上昇している。
- ビザの緩和とLCCの普及により、訪日へのハードルが下がった。
以上の要因を考慮すると、訪日外国人が増加した理由は、一言でまとめると「日本が相対的に安くなったため」です。
外国人が日本文化の素晴らしさに気づいて訪日外国人が増加したというのは非常に疑問です。
どちらかと言えば因果関係は逆で、訪日外国人が増加したからこそ、改めて日本文化の素晴らしさに気づく外国人が増加したと考えた方が自然であると思います。
日本で爆買いしている外国人をよく目や耳にしますが、これは日本で買った方が安いからに他なりません。
自国で買うよりも日本で買った方が安いので、日本に訪れた時にまとめ買いするのです。
日本は長期の経済低迷とデフレで、この数十年間で物価がほとんど上がっていません。
一方で、海外は経済成長と賃金上昇が着実に進み、日本は相対的に安くなっていきます。
さらにアベノミクスによる円安、ビザの緩和やLCCの普及などの要因が重なって、旅行先として日本を選択する外国人が増えたと考えられます。
結果として、多くの外国人が日本を訪れるようになり、日本文化の素晴らしさに気づいてくれる旅行客も増えたと言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここでは「アベノミクスによる訪日外国人の増加は本物か?」というテーマで、訪日外国人が増加した要因についてデータを示しながら見てきました。
データ見ると、訪日外国人が増加した理由は「日本が相対的に安くなったため」であることがわかりました。
テレビのニュースなどを見ていると、どうやら日本文化の素晴らしさに海外の方が気づいてくれて訪日客が増加したみたいな言われ方をしている場合もありました。
しかし、データを見るとこのような考えは間違っていたとわかります。
むしろ因果関係は逆で、「日本が相対的に安くなり訪日外国人が増加したために、日本文化の素晴らしさに気づく外国人も増加した」と考える方が自然です。
データを見ると、いかに日本の経済が低迷して、物価が上がっていないことがはっきりとわかりました。
一方で海外は経済成長してなおかつ賃金も上がっています。
このまま経済低迷やデフレが続くと、日本はますます安い国になってしまうだろうということがデータを見てからもわかりました。
ここでご紹介した世界銀行やOECDのデータは誰でもアクセスすることができます。
探索していると面白いデータも見つかるのでデータを見るのが好きな方にオススメです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。