こんにちは。TATです。
今回は数多あるテクニカル分析の中で、特に人気の高いMACDについて解説していきます。
MACDは、「トレンド系とオシレーター系の両方を併せ持つ優秀なテクニカル分析ツール」です。
つまりトレンドの把握をすることと、株を買われ過ぎ・売られ過ぎを判断することをMACD一つですることができます。
さらにトレンド発生中の押し目買いのタイミングや、利益確定のタイミングなどを見極めるためにも利用できます。
MACDについては、僕も毎日利用していて、主にエントリーポイントを見極めるために利用し、利益確定を判断する際にも利用しています。
投資について勉強をしていると、多くの方がMACDという言葉を聞いたことがあると思います。
ただ、MACDの数式は少し複雑でわかりにくいですし、MACDに関する説明を読んでもMACDそのものに関する説明がほとんどで、活用法などについてはかなりあっさりしている場合が多いのが現状です。
「実際のところどうやって使うの?」という疑問を持っている方は多いように感じます。
これらの経験を踏まえて、ここではMACDに関する概要や特徴と、僕のMACD活用法について解説していこうと思います。
概要では、数式も一応出しますがこちらはさらっと流して、実際のチャート例を多用してできる限り直感的にイメージできるように解説していきます。
この記事を読めば、数式がわからなくても、「MACDにはどのような特徴があって、どのように活用できるのか」を理解できるようになるべく噛み砕いて解説することを目標にしています。
目次
【最も人気なツールの1つ】 「MACD」について徹底解説!
1. MACDとは?
まずはMACDについてご紹介します。
まずMACDという名前については正式名称から頭文字をとったもので、正式名称は「Moving Average Convergence/Divergence Trading Method」と言います。
なんのこっちゃかわからないですよね(笑)
日本語では「移動平均収束拡散手法」などと訳されます。
正直なところ、日本語を見てもさっぱり意味がわかりませんw
MACDはジェラルド・アペルという方が、1979年に開発したテクニカル分析ツールです。
僕が思うMACDの最大(かつ最強)の特徴は、トレンド系とオシレーター系の両方の機能を併せ持っていることです。
次からMACDの数式や特徴について順番にご紹介していきます。
2. MACDの計算式〜数式よりもイメージで解説します〜
MACDの計算式
まずはMACDの計算式について解説します。
一応数式は載せておきますが、数学が苦手(そして嫌い)な人でも大丈夫なように、なるべくイメージ的に理解してもらえるように噛み砕いて説明していきます。
早速MACDの計算式をご紹介します。
MACDは、短期EMAから長期EMAを引くことによって算出し、MACDの移動平均線をSignalとして使用します。
基本的には短期EMAには13、長期EMAには26、Signalの移動平均線には9を使います。
日足チャートで利用するのであれば13日EMAと26日EMAからMACDを算出し、その9日移動平均線がSignalとなります。
MACD = 短期EMA - 長期EMA
Signal = MACDの移動平均線
EMAとは?
EMAとはExponential Moving Averageの頭文字をとったもので、日本語では「指数平滑移動平均線」と訳します。
EMAは次の計算式で算出できます。
EMA=前日のEMA×(1-α)+当日の指数×α
ここのαは平滑定数と呼ばれ、次の式で計算することができます。
α=2(n+1)
イメージで解説します
この計算式を見ただけで特徴が理解できる方はなかなかいないと思うので、噛み砕いて直感的に理解できるように解説していきます。
EMA
まずはEMAから見ていきます。
前回の記事でご紹介した移動平均線とは異なり、より直近のデータに重きを置いた平均線になります。
通常の移動平均線は、すべての値を同等に扱います。
5日移動平均線を算出する際には、当日を含めた過去5日間の終値は全て同等扱いで、単純に合計して5で割ることがで算出することができます。
しかし5日EMAの場合は、当日の終値に重きを置いて、過去のデータになるほど比重を下げていきます。
各終値が計算式に与える影響は次のようなイメージです。
このように、EMAは直近の終値の影響を強く考慮するので、EMAの方が移動平均線よりも動きは鋭くなります。(その分騙しは増えます)
MACD
さらに、ここで改めてMACDの計算式をみると、MACDは短期EMA ー 長期EMAになります。
基本的には短期に13、長期に26を使用します。
これらの差を算出しているということは、移動平均線で見ていたゴールデンクロスやデッドクロスはこの計算式に組み込まれてるということになります。
例えば、MACDが0の場合は、短期EMAと長期EMAの値が同じ、つまりちょうどこれらが重なっている状態です。
そしてMACDがマイナスからプラスに転じた時が、短期EMAと長期EMAでゴールデンクロスが発生することに該当します。
反対に、MACDがプラスからマイナスに転じた時は、短期EMAと長期EMAでデッドクロスが発生することに該当します。
そして、SignalについてはMACDの移動平均線で、一般的な期間としては9を使用します。
日足であれば9日移動平均線です。
MACDで使用しているEMAは、移動平均線に比べて機敏に反応するので、移動平均線と比べると騙しは多くなりますが、このSignalを利用することで、この弱点をカバーすることができます。
MACDとSignalを併用することで、MACDでEMAの特徴である機敏な反応を捉えつつ、Signalから大きな流れを捉えることができるので、より正確に売買タイミングを見極めることができます。
MACDの使い方
一般的な使い方としては、MACDとSignalでゴールデンクロスが発生したら買い、デッドクロスが発生したら売りと判断します。
そのほかにも前述の通り、MACDは短期EMAと長期EMAの差分を見ているので、MACDの値がマイナスからプラス、あるいはプラスからマイナスに転じたタイミングも売買サインになります。
次からはMACDの特徴について順番に詳しく見ていきましょう!
3. MACDの特徴①〜移動平均線よりも反応が早い
まず1つ目の特徴が「移動平均線よりも反応が早い」という点です。
EMAは直近の終値をより重視するので、移動平均線と比べると株価の動きに敏感に反応します。
参考までに25日の移動平均線とEMAを比べてみましょう。
例:トヨタ自動車
ここではトヨタ自動車(7203)の日足チャート使用し、25日の移動平均線とEMAを比較しています。
こちらのチャートで移動平均線とEMAを比較すると、EMAの方が早く反応し、後から移動平均線が追いついてくる様子がお分かりいただけるかと思います。
このようにEMAは移動平均線よりも機敏に反応しますが、その分騙しの確率は高くなります。
そして騙しの多さを補うために、MACDの移動平均をSignalとして使っているわけです。
ちなみにですが、この移動平均線とEMAを併用してトレードする戦略もあります。
つまり、同期間(あるいは異なる期間)の移動平均線とEMAを組み合わせて、ゴールデンクロスが発生したら買い、デッドクロスが発生したら売りといったように判断してトレードします。
このトヨタ自動車の例を見てみると、結構うまくいきそうな感じもしますよね!
4. MACDの特徴②〜トレンド系としての機能〜
2つ目の特徴が「トレンド系としての機能」です。
MACDの最大の特徴は、より正確な売買ポイントを見極めることができるということです。
ゴールデンクロスやデッドクロスによる売買タイミングの発生については、移動平均線よりもうまく見極めることができます。
特にトレンド発生中の押し目買いのタイミングについては、移動平均線では確認できなくてもMACDでは確認できるということがよくあります。
例:SHINPO
【シンプルだけど奥深い!】「移動平均線」について 徹底解説します!でもご紹介した銘柄SHINPOを例に見てみましょう。
確認していただきたいのが、②の上昇トレンドです。
MACDを見てみると、上昇トレンド中に4度のゴールデンクロス(緑と赤の矢印)が発生していることがわかります。
実際にそれらのゴールデンクロスと株価を見てみると、緑色の矢印で示している3つのゴールデンクロスは押し目買いのタイミングを正しく示してくれていることがわかります。
赤色の矢印で示しているゴールデンクロスについては、直後に株価は下落していますが、最終的には株価は上昇しています。
ここについては、下がった時点で損切りするかどうか悩ましいところです。(僕なら損切りしてますw)
何れにしても、MACDを利用することで、(特にトレンド発生中は)移動平均線よりも正確に売買のタイミングをキャッチすることができます。
そしてここでご紹介した押し目買いのタイミングは過去の記事でご紹介した『グランビルの法則』でも対応できる株価と移動平均線の位置関係にあります。
こちらの詳細については、過去の記事をご参照ください。
MACDを利用すると、グランビルの法則でいうところの押し目買いのタイミングをシグナルとして検知できることがわかります。
【シンプルだけど効果絶大!】 売買法則の基本である 「グランビルの法則」とは?
5. MACDの特徴③〜オシレーター系としての機能〜
3つ目の特徴が「オシレーター系としての機能」です。
MACDの最大の特徴はトレンド系とオシレーター系の両方の特徴を兼ね備えていることです。
ほとんどのテクニカル分析ツールは、これらのどちらか1つしか持っていませんが、MACDは両方を持っています。
MACDのオシレーター系の特徴については乖離率のような使い方ができるということです。
ぶっちゃけ、他のオシレーター系のツールを併用した方が使いやすいかなと思いますがここでは特徴として一応ご説明しておきますw
前述の通り、MACDの計算式は「短期EMA ー 長期EMA」です。
したがって、この絶対値が大きいほど短期EMAと長期EMAが大きく離れていることを示しています。
ゆえに、ある程度MACDの絶対値が大きくなったら逆張りのタイミングとして利用することができます。
ただしこの使い方をする際には注意すべき点があります。
それはMACDは絶対値であるという点です。
乖離率のような割合で示す値については全ての状況に対して一様に「乖離率が5%を超えたら逆張りを仕掛ける」などといったような戦略を取ることができます。
しかしMACDの場合はただの差分なので、全ての状況に対して一様なルールを決めることができません。
もともと株価の高い銘柄であれば、MACDの絶対値は大きくなりがちです。
例:SHINPOとトヨタ自動車の比較
SHINPO
先ほど使用したSHINPOを例に見てみましょう。使い回しですみませんw
MACDの値を見てみると、最小値で約-25、最大で約100となっています。
これが別の銘柄になるとどうなるでしょう。
トヨタ自動車
トヨタ自動車を見てみましょう。
先ほど例としてあげたチャートの出来高をMACDに変更しました。
こちらのMACDの値を見てみると、最小値で約-80、最大値で約160となります。
SHINPOとトヨタ自動車は株価がそもそも大きく違うので、MACDの値ももちろん変わってきます。
トヨタ自動車を見てみると、だいたいMACDが100を超えたあたりで転換するので、ここを逆張りのタイミングとしてみることができます。
しかしこの100という数字をSHINPOにも適用しようとすると、うまく機能しないことがわかります。
100までMACDの値が来ることは滅多にありませんし、だいたいの場合はそれより前に下落に転じています。
全ての状況に一様に適用できない
このように、MACDは全ての状況に一様に適用することはできません。
銘柄ごとに最適値は変わってきます。
もし、一様に使用する場合は、株価に対するMACDの値を算出する必要があります。
ただ、そこまでするのであれば移動平均線乖離率などの、その他の分析ツールを使ったほうが楽だと思います(笑)
MACDをオシレーター系として使用するのであれば、「ある程度長期間のデータを確認して、MACDがどの値まできたら株価の動きが転換するのか」を分析する必要があります。
例:トヨタ自動車で基準値を決める
期間を引き延ばしてチャートを見てみる
例として先ほどのトヨタ自動車のチャートの期間を少し引き伸ばしてみます。
このチャートを見てみると、なんとなくですが、MACDが-50を下回ると上昇に転じそうな感じがします。
下落に転じるタイミングについてはみる人によって意見が異なりそうですね。
厳しい設定をするのであれば100あたりが基準になりますが、緩めに設定するのであれば50を基準にするかもしれません。
何れにしても、MACDはオシレーター系として利用することは可能ですが、利用法については少し注意が必要です。
きちんと分析してから基準を設けないと確実に事故りますw
この辺りは少し上級者向けの使い方になるので、その他のオシレーター系の分析ツールを使用した方が容易かなと思います。
どうやって基準値を決めるか?
ついでにですが、ここから少し頑張ってMACDをオシレーター系として使用する際に、どのように基準を設けるのかについてみてみます。
前述したように、「MACDの絶対値がどこまで大きくなれば転換する」とみなすかについて考えてみます。
少し統計的な話になってしまうので、あまり興味がなければ読み飛ばしちゃってくださいw
ここでMACDの値をヒストグラムで表示してみます。
ヒストグラムとは各値の出現回数をチャートにしたものです。
ここでは過去300日分のデータがあるのでデータ数は300です
そして平均値が21.82、標準偏差値が57.39です。(平均値と標準偏差値については小数第2位まで表示しています。)
ヒストグラムを見てみると、正規分布となっていることがわかります。(正規分布の詳細については正規分布とガウスの定理のWIkipediaをご参照ください)
正規分布に従うデータの平均値と標準偏差値には次のような関係があります。
平均値を μ 、標準偏差値をσ とします。
- -1σ ≦ μ ≦ +1σ の範囲に含まれる確率: 68.27%
- -2σ ≦ μ ≦ +2σ の範囲に含まれる確率: 95.45%
- -3σ ≦ μ ≦ +3σ の範囲に含まれる確率: 99.73%
ここでは平均値は21.82、標準偏差値は57.39なので当てはめてみます。
- -35.57 ≦ μ ≦ +79.21 の範囲に含まれる確率: 68.27%
- -92.96 ≦ μ ≦ +136.6 の範囲に含まれる確率: 95.45%
- -150.35 ≦ μ ≦ +193.99 の範囲に含まれる確率: 99.73%
一般的に2σを使用することが多いので2σで考えると、MACDの値は95.45%の確率で-92.96 ≦ μ ≦ +136.6の範囲内に収まるということになります。
これを考慮すると-92.96 と +136.6を基準にしてMACDをオシレーター系として利用すると信ぴょう性が上がります。
3σで考えても良いですが、ここを基準にするとそもそもこの値まで来る確率がかなり少なくなります。
統計的に考えると騙しが少なくなりますが、そもそも利用できる頻度も減るのでどの値を使うかについては人によって意見が分かれるところです。
現実的に考えると2σあたりを利用するのが良いのかなと個人的に思います。
何れにしてもここまでしてMACDをオシレーター系として利用するのであればその他のオシレーター系の分析ツールと組み合わせて利用した方が簡単かなと思いますw
以上がMACDの特徴になります!
6. 【おまけ】僕のMACD活用法!
ここまで、MACDの概要や計算式、特徴について解説してきました。
最後におまけとして、僕のMACD活用法をご紹介しようと思います。
基本的にはトレンド系として、売買サインを見極めるためにMACDを利用していますが、いくつかの条件を設けて精度を上げているのでご紹介していこうと思います。
僕のMACD活用法としては、基本的にゴールデンクロスとデッドクロスを売買サインとして利用しています。
その他に設けている条件をざっくりまとめてみました。
- ゴールデンクロス発生時の直近株価が75日移動平均線を上回っている
- 上昇トレンド局面、上昇トレンド発生中にゴールデンクロスが発生する
- 下落トレンド中のゴールデンクロスではエントリーしない
- 他のテクニカル分析ツールと併用して見極める(特にグランビルの法則の押し目買いのタイミングと併用します)
基本的には、上昇トレンドに突入するタイミングか、上昇トレンド中にゴールデンクロス発生した時のみエントリーします。
さらにこちらの記事でご紹介している「第2ステージ(上昇局面)」において応用すると効果抜群です。
【ミネルヴィニの成長株投資法】株価を形成する4つのステージとは?狙うべきは第2ステージ!
下落トレンド発生時あるいはレンジ相場においては、ゴールデンクロスが発生しても基本的にはスルーします。
MACDの強みはトレンド系としての特徴で、かつトレンド発生中の押し目買いの見極めにとても有効です。
僕の場合はこの強みを活かせる場合にのみMACDを活用します。
例:SHINPOではMACDが効果的に利用できることがわかる
先ほどの例でも何度かでていますが、SHINPOを見てみますと、上昇トレンド中の押し目買いのタイミングを示していることがわかります。(緑と赤の矢印)
このように上昇トレンドがはっきりと発生しているときにゴールデンクロスが発生した場合のみにエントリーします。
①のレンジ相場の中でもゴールデンクロスが何度か発生していますが、こういう場合には一切エントリーしません。
ちなみにですが、僕の経験上、レンジ相場で利益を取ることは結構難易度が高いです。
プロの投資家などはがんがんトレードしますが、見極めが難しいので基本的にはおすすめできません
僕のスタンスは、「高確率で勝てる場面でしっかり稼ぐ」です。
難しいところでは手を出さずに、勝てる確率が高い(と思っている)場面でのみトレードします。
その場面がトレンド発生中の時であり、株価が右肩上がりのチャートを形成している場合です。
この上昇トレンド発生中の上昇分の一部をゲットできたら十分です!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここでは、MACDについて、概要や特徴、僕の活用方法についてご紹介してきました。
MACDは投資家の中でもとても人気のあるテクニカル分析ツールで、その最大の特徴は「トレンド系とオシレーター系の両方の機能を兼ね備えている」ということです。
特にトレンド発生中における押し目買いのタイミングの見極めには圧倒的な力を発揮します。
過去の記事でご紹介した移動平均線では見極めることができなくても、MACDでは見極められるという状況が結構おきます。
もちろんMACDは決して完璧ではありません。
騙しもありますし、うまく機能しない状況(特にレンジ相場)こともあります。
したがって、MACDを使用する場合は、MACD単体で使用するのではなく、他のテクニカル分析ツールと組み合わせたり、その他の制約を設けて使用することをおすすめします。
MACDの弱点を補強してくれるようなツールを使うことで、騙しを回避することができるようになります。
何れにしても、完璧なテクニカル分析ツールは存在しないので、それぞれのメリットとデメリットを理解して、お互いに補えあえるようなツールを組み合わせて使うことがとても重要です。
この記事を読んでくださったみなさんは、MACDについての知識はかなり深まったと思います(信じていますw)
ぜひこの機会にみなさんの取引戦術に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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